55年前の記憶

1970年、父が岡山に単身赴任していました。
家の整理の際、住んでいたアパートの住所が出てきて、
調べたら岡山駅から2.5キロ。

「よし、レンタサイクルで行ってみよう。父と歩いた旭川の堤防から岡山城が見えたはず」

55年ぶりに岡山に降り立ち、
『ももちゃり』なる自転車でいざ!!!
途中、「○○の住所はこちらですか?」と、道ゆく人に尋ね、到着。

新しい家が建っていて、
私の中の記憶とは全然違っていましたが、
それでも、
家族で歩いた、
岡山城を見ながらの旭川の堤防は、
変わらず、素敵な景観です。

「お父さん!働かせていただき、
住まわせていただいた岡山にお礼に来たよ」と、
55年前の、何もわからなかった子供の頃の記憶を辿り、
暑くも寒くもないサイクリング日和の天候にも感謝していました。

そして、
ハタと思いつき急遽、
倉敷の大原美術館へ。

「どれか好きなポストカードを買っていいから」と母に言われ、
子供ながら手にしたのが、
シダネルの『small table in evening dusk』

これも、55年前の記憶の絵画。

私のなかでは、
この絵にはドビュッシーの『美しい夕暮れ』が聴こえてきます。
できればチェロの音色で。

55年前、
岐阜から特急『つばめ』が走っていました。
もちろん今の新幹線の時間で岡山に行けるわけではありませんが、
父が、
岐阜から離れる時、岐阜に戻る時、
どんな気持ちで、長い時間『つばめ』に乗っていたのだろう…と、
新幹線『さくら』に乗りながら
涙が溢れそうになりました。

2025年は大阪万博。
奇しくも、
55年前も活気あふれた大阪万博が開催されていました。

昭和元禄落語心中ミュージカル

大阪フェスティバルホールにて、
日本初、日本発ミュージカルを観てきました。

山崎育三郎、古川雄太、明日海りおという、
ファン多き出演者のミュージカル。

一番に思うことは、
やはり、歌の上手い演者のミュージカルは安心して観れる。
そして、
日本が舞台。
それも落語という世界を取り上げての作品は、
これを機に、日本舞台の秀作が多く作られていくことを願うのみ。

元々はコミック、そしてNHKドラマとなり、ミュージカル化へと。
コミック、ドラマは知らなかったので、とりあえず知識は入れず観劇しました。

時代を映す、ブギウギあり、ロックあり。

落語をテーマにするということは、
ある程度、演者は噺を覚えなければいけない。…大変。

桂枝雀さんが好きだった私は、
「あの独特な高い声での痛快な喋りをもう一度聞きたい…五代目円楽さんも聞きたい…歌丸さんも…」なんて昭和を思い出していました。

山崎育三郎さんも古川雄太さんも、
それぞれの個性が光るキャラクターで、
何より、中村梅雀さん。
お歌も上手ですが、流石の演技力。
お父様の中村梅之助さんの『遠山の金さん』を思い出し、
大らかな梅之助さんの金さんが一番好きだったと、
これまた昭和がよぎります。

子役も優れていて、
初めて物語を知る私にも、
時の流れの交差が理解できる構成。

エネルギッシュで、日本的な艶っぽさも感じる新しい作品が世に出ました。

欲を言えば、
帰り際、中之島の桜と灯りと古き建物を横目に、
口ずさめるような耳に残る楽曲があれば。。。
なんて、肥後橋から淀屋橋まで帰路を急ぎました。

2017-2024 岩﨑バイオリン教室